「媛スマとキャビアのグジェール」。トロリした舌触りの「媛スマ」のタルタルがキャビアの塩味と調和。ニンニクチップの小気味よい食感がアクセントに。

「銀座 大石」で愛媛フェア開催中
幻とされる希少なスマの養殖魚「媛スマ」を
贅沢で美味なる絶品フレンチに

「媛スマとキャビアのグジェール」。トロリした舌触りの「媛スマ」のタルタルがキャビアの塩味と調和。ニンニクチップの小気味よい食感がアクセントに。

気に入った食材のみでコース料理を構成する、超人気のフランス料理店「銀座 大石」の大石義一さん。「厳選した食材だけに、ちょっと使ってやめるということはあまりなく、長く使い続けることが多いです」と言います。愛媛県が自信をもって提供する「媛スマ」は、そんな大石さんに選ばれた食材のひとつ。まるでマグロの大トロのような口どけと風味でゲストたちを楽しませています。

トロのような「媛スマ」とキャビアで
シャンパンに会うアミューズを提供

「肩ひじ張らずにおいしいフランス料理が存分に楽しめる」
これが「銀座 大石」を愛してやまないリピーターたちの共通意見。オーナーの大石義一さんの明るく気さくな性格が、そのままレストランの雰囲気にも反映され、美食だけでなく、大石シェフの笑顔を楽しみに訪れるゲストも少なくありません。そうした人たちによる賑わいは、4年ほど前のオープン当初から続いていて、「銀座 大石」は、相変わらず予約の取りにくい店の筆頭に挙げられています。

素材の鮮度と味を追求する大石シェフが愛用している食材のひとつに、愛媛県が総力を上げて養殖に成功した「媛スマ」があります。
天然のスマは、漁獲量が少ないため「幻の高級魚」と呼ばれるほど希少な魚。愛媛県では、2013年から愛媛大学と共同でスマの養殖の研究に取り組み、3年後、養殖魚「媛スマ」を誕生させました。「媛スマ」の特徴は脂ののりのよさで、「その身はマグロのトロにも匹敵する」と言われるほどです。

スマはマグロの近縁種。養殖魚の「媛スマ」は、きめ細かな脂ののりで、その身質について、背は中トロ、腹は大トロとも。臭みがなく、なめらかな口当たりで、生食はもちろん、さまざまな加熱調理に向く。

大石シェフは、この「媛スマ」をアミューズに取り入れ、「媛スマとキャビアのグジェール」を提供しています。
「グジェールとは、シュー生地にグジェールチーズを混ぜて焼く、フランスのブルゴーニュ地方の郷土料理です。これはシュー生地だけを食べるアミューズなのですが、うちの店では、生地の上にいろいろな具材をのせてお出ししています。『媛スマとキャビアのグジェール』には、『媛スマ』のタルタルと、それからたっぷりのキャビアをのせて——。シャンパンに、とても合うアミューズですよ」と、なんも贅沢なアミューズについて、満面の笑みを浮かべて語る大石シェフ。料理の話をする際のシェフは、いつも嬉しそうです。
この「媛スマとキャビアのグジェール」を口にした瞬間、ゲストたちは、一気に大石ワールドへと引き込まれていきます。というのも「銀座 大石」は、どの席からもシェフの動きが見られるカウンタースタイル。そしてシェフは、”プロローグ”のこの料理を、ひとりひとりのゲストに手渡ししていきます。

感謝の気持ちを込めて、アミューズのひと品だけは手渡しで。ゲストを大切にする大石シェフらしい歓迎の仕方だ。

「ヨーロッパの人たちは目が合えば笑顔を交わすし、握手を求めてきたりもしますよね。レストランでも、来てくださったことに対する感謝の気持ちを表したいと思ったのですが、でも私から握手を求めるのは何か違うし……。そこで思いついたのが、アミューズを手渡しすること。『ようこそ』という感謝の気持ちの印です」

「媛スマ」にシャリやワサビを添えて
洋風にアレンジした鮨も大好評

脂ののった「媛スマ」を、大石シェフは、まずたたきにします。ワラで香りをつけてから刻み、ケイパー、エシャロット、フレンチドレッシング、塩などと和えてタルタルに。これをシュー生地にのせ、その上にキャビアを盛り、ニンニクチップを添えて仕上げました。
「カツオのたたきのイメージです。『媛スマ』は、見た目はカツオに似ていますが、味はカツオとは違います。ただ、脂ののりがとてもよいので、ワラの強い薫香がよく合うんです。そこで、カツオのたたきをイメージして調理したら、これが美味で、おまけにシャンパンにとても合う味わいのひと品になったというわけなんです」

チーズを加えて焼いたシュー生地をセルクルで抜き、「媛スマ」のタルタルを詰めていく。「媛スマ」を味わってほしいから、「タルタルといっても食べ応えのある大きさにカットしています」と大石シェフ。

大石シェフは、『媛スマ』を今回のフェアに限らず、銀座に店を開いた当初から使っていて、最初は、にぎり鮨のようなスタイルで提供していたと言います。
「ワラで焼いて薫香をつけるまでは今回と同じ手順です。以前はそれをそぎ切りにして、洋風のシャリの上にのせ、わさびをつけて提供。これもお客さまには好評でしたね。
うちの店の場合、メニューを変えるのは、基本的に2か月ごとの年6回。この『媛スマ』のお鮨は2年ぐらい続けましたので、約4か月、お客さまに楽しんでいただいたことになります」
そして、今回のフェアでは、少し目先を変えて、タルタルに。これもゲストには好評だそうです。
「僕は、誰かにすすめられたからちょっと使ってみる——というような食材の使い方はあまりしないんですよ。取り入れるまでに厳選して、できるだけ長く使うというスタイルです。やっぱり食材にも愛をもって接しないと」と言うと、「だって、”愛媛県”のフェアですから、”愛”は不可欠ですよね」と笑いながら続け、上手にまとめてくれました。

フレンドリーな雰囲気で味わう、愛のある料理。
今日もまた、「銀座 大石」には多くのグルメたちが集います。

大石義一さん

1981年、福岡県生まれ。地元の居酒屋やホテル、レストランで経験を積んだ後、22歳で上京して名店「北島亭」へ。同店でスーシェフを務めるなど16年間勤務し、2019年9月、「銀座 大石」で独立。開店当初から予約困難な店として話題に。

銀座 大石
東京都中央区銀座2-10-11マロニエ通り銀座館2F
TEL 03-6278-8183
17:00~、20:30~(土祝 12:00〜、18:00〜)
日休

取材・文/上村久留美 撮影/依田佳子